サイロ

日記と音楽

オールタイムベストソング 50曲

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 これまでに聴いてきた音楽の中から50曲を選びリスト化しようと考え、備忘録として軽い感想のようなものを書き付けた。

 

 また、ひとつのアーティスト/グループから選ぶ曲は一曲までとした。個人的な思い入れによる偏りを防ぐためであるが、同時に制限を設けることによってより自分自身の好みを反映させることが出来ると考えたためである。

 

 以下は曲目だけを抜粋したリストであり、感想とYouTubeリンクを付けた内容は更にその下に記載している。

 

01 Electrolite / R.E.M.
02 Do You Realize?? / The Flaming Lips
03 The Wilhelm Scream / James Blake
04 Badlands / Bruce Springsteen
05 Reckoner / Radiohead

06 All My Friends / LCD Soundsystem
07 The End / The Doors
08 It's a Long Way to the Top (If You Wanna Rock and Roll) / AC/DC
09 In My Life / The Beatles
10 Ya Hey / Vampire Weekend

11 Hallelujah / Jeff Buckley
12 i / Kendrick Lamar
13 Wake Up / Arcade Fire
14 Bloodbuzz Ohio / The National
15 Real Love Baby / Father John Misty

16 Walls / Beck
17 The Masterplan / Oasis
18 Yellow Ledbetter / Pearl Jam
19 Turn / Travis
20 Caroline, No / The Beach Boys

21 Where Is My Mind? / Pixies
22 Someday / The Strokes
23 All These Things That I've Done / The Killers
24 Fools Gold / The Stone Roses
25 Cruel To Be Kind / Nick Lowe

26 I Am Trying to Break Your Heart / Wilco
27 My Girls / Animal Collective
28 Breed / Nirvana
29 Take Me Out / Franz Ferdinand
30 Maps / Yeah Yeah Yeahs

31 Love Will Tear Us Apart / Joy Division
32 Rocket / Smashing Pumpkins
33 When the Sun Goes Down / Arctic Monkeys
34 Skinny Love / Bon Iver
35 Obstacle 1 / Interpol

36 The Weight / The Band
37 Cold Hard Bitch / Jet
38 Lost In The World / Kanye West
39 March of the Pigs / Nine Inch Nails
40 Lost / Frank Ocean

41 Downtown Train / Tom Waits
42 One Headlight / The Wallflowers
43 Dry Your Eyes / The Streets
44 Happy / The Rolling Stones
45 Mykonos / Fleet Foxes

46 VCR / The xx
47 Satellite / Guster
48 One Big Holiday / My Morning Jacket
49 Let's Go Out Tonight / The Blue Nile
50 Brennisteinn / Sigur Rós

 

 

 

01 Electrolite / R.E.M.

 音楽は時間経過と密接な関わりをもつ芸術媒体であり、その制約はその他の表現方法よりも大きなウェイトを占めている。それは常に「単調」「退屈」という言葉と共に楽曲の評価を落とすことに寄与するが、時にその制約を逆手に取り巧みな曲展開によって時間経過をドラマティックに演出できる作品が完成することがある。この曲もまたそんな曲のひとつであり、そしてその成功は選び取ったテーマの壮大さにより更に高まった。

 印象的なギロと上品なピアノラインで幕を開けるこの曲は円熟期を迎えたR.E.Mらしい衒いのないサウンドで展開し、ハリウッドとそのスターたちへの愛、そして目前に迫っていた20世紀への別れをこれ以上ないほど完璧に歌い上げている。

 

 

 

02 Do You Realize?? / The Flaming Lips

 「君は気づいているかい?/君の知っているひとはいつか皆死んでしまうんだよ」「それは回り続けるこの星が見せた ただの幻想なんだ」

 

 ボーカルのウェインが父の死を想って書いたこの曲は、ジングルのように祝祭的な雰囲気に包まれたメロディでありながら、死が逃れえぬものであること、全ては天体の回転による幻想であることを残酷に歌う。極めて高い文学性を備えた歌詞はそれだけでロックミュージックの歴史に残る価値があり、この先長い間彼らの名前を風化させない力があるだろう。

 

 

 

03 The Wilhelm Scream / James Blake

 「美しさ」という基準で考えれば、この曲がリリースされた瞬間から今まで、これを上回るものは存在していない。ロボットのように機械的な冷たさを付与された声と、硬質かつ先進的なダブステップの完成形とも言えるトラック。どこまでも肉体性を排除したアレンジと、痛々しいほどソウルフルな歌唱が完璧なバランスで全てが同居している。儚く幽玄かつ、透徹した美を持つ傑作。

 

 

 

04 Badlands / Bruce Springsteen

 スプリングスティーンが青春群像のミュージシャンから、社会や国家に対するメッセージを発信するミュージシャンへと成長する過渡期にあった曲である。ライブで演奏される際によりダイナミックに変貌するドラムプレイと、一度聴いたら忘れることのできないピアノリフ(本人が告白した通りAnimalsからの剽窃ではあるが)。Eストリートバンドを象徴するクラレンスクレモンズのサックス。そして恒例となっている観客を巻き込んだ長い長いチャントの後、スプリングスティーンは観客へライトを向け最も重要な節を歌う。

 

「生きていて良かったと思うことは悪いことなんかじゃない/俺は居場所を見つけたい/俺のことをちゃんと見てくれる人たちを見つけたいんだ」

 

 

 

05 Reckoner / Radiohead

 鮮烈かつ怜悧なパーカッションはインダストリアルミュージックのようであり、その力強い響きにトムヨークのファルセットと曲がりくねるギターが絡むことにより、どこか異界から鳴っているような神秘的な雰囲気を備えている。

 

 

 

06 All My Friends / LCD Soundsystem

 ジェームズマーフィーが「自分の友達についての曲を書き続けたとしてもあれ以上の曲は作れないと思う」と述懐した通り、この素晴らしい楽曲は友人について歌うことによって人生そのものを鮮やかに浮かび上がらせることに成功している。全ての始まりとなったヒットチャートをチェックした夜。変わっていく友人と自らをスポイルしかねない苦難と抑圧。ダンスパンクらしいシンプルなトラックは歌詞の進行とともにドラマティックに展開し、「今夜、全ての友達に会えたなら」とリフレインするラストへ結実する。

 

 

 

07 The End / The Doors

 12分を超えるこの壮大なロック史上の傑作が、当初は単なる別れの歌として書かれていたことを誰が信じられるだろうか。レイマンザレクによる特徴的なキーボードこそフィーチャーされていないものの、極めてゆったりとしたリズムに絡む悠然としたギターは確かなサイケデリアをたたえている。エディプスコンプレックスとギリシャ悲劇を高らかに歌い上げるジムモリソンの超越的なボーカルは、確かにThe Doorsサイケデリックバンドとして頂点に立っていたことを証明している。

 

 

 

08 It's a Long Way to the Top (If You Wanna Rock and Roll) / AC/DC

 ロックンロールバンドの決意表明としてこれ以上ないほどシンプルかつ力強い一曲。現在においても一切色あせることのないギターリフ、間奏部の稲妻のようなバグパイプはラウドなロックの究極系であるオーストラリアが生んだ最高のロックバンドはこのタイトル通りタフな道を進み、そしてボーカルの死というバンドにとっての最高の危機を乗り越えてトップに立った。デビューを飾り、そして現在に至るまで変化しない彼らのスタイルを象徴するこの偉大なる曲は、ボンスコットの死以来ライブで演奏されていない。

 

 

 

09 In My Life / The Beatles

 音楽的な部分に関して今更言えることは何もない。この曲の何よりも偉大な点は、The Beatlesが単純なロックバンドを超えて芸術性獲得する、その始まりとなった曲であるという点だ。ジョンレノンの書いた歌詞はこれまでの人生について言及し、死別した友人や思い出の場所について感傷的に歌う。それは明るくアイドルポップめいていたこれまでのスタイルとは一線を画し、これ以降バンドは20世紀最高の音楽家としての地位を確立していく。

 

 

 

10 Ya Hey / Vampire Weekend

 神の名をもじって付けられたこのタイトルは、コーラスにおいて「ただあってあるだけ」と嘯く神を揶揄するように繰り返し歌われ、信仰の失墜とそのコミュニティに所属できない者の悲哀を際立たせる。悲痛な神への懐疑を歌ったこの曲はしかし、荘厳なゴスペル調のトラックによって格調高さすら備えアルバムのテーマの主軸として完璧な役割を果たした。

 

 

 

11 Hallelujah / Jeff Buckley

 ギターの弾き語りによるシンプルなアレンジの曲だが、レナードコーエンが5年もの歳月をかけて書いた歌詞はポピュラーミュージック史上最高の完成度を誇る。旧約聖書を下敷きに描かれたふたつのヴァ―スでは神への不信を。以降描かれる現代のヴァ―スは「冷たく」「壊れた」ハレルヤが鳴り響き、愛は既にその光を完全に失っている。ジェフバックリィの天使のような歌声はその世界観を完璧に表現し、かつ繰り返される「halleluiah」のコーラスを美しく響かせている。

 

 

 

12 i / Kendrick Lamar

 暗く陰鬱な雰囲気に包まれたアルバムTo Pimp A Butterflyにおいて唯一軽快なナンバーであり、その輝きは全ての悩みから脱却したようにも、単に躁転しただけのようにも見える。だがそれでもこの曲は確かに力強いメッセージに溢れ、破れかぶれでも人生を肯定し、地獄めぐりのような絶望的な状況の中でも「俺自身を愛している」と歌う。その姿勢は高潔であり、新たなヒップホップの王としての貫禄を世界中に示したことは間違いない。

 

13 Wake Up / Arcade Fire

 力強く、美しく、特別な魅力を備えた曲である。導入部の火が点いたエンジンのようなギターストロークそして誰もが合唱に参加したくなるような素晴らしいコーラスは、21世紀に入ってから書かれた音楽のなかでも最高のものだ。

 

14 Bloodbuzz Ohio / The National

 猛りうねるドラムリフと疾走するギターストロークそして流麗なピアノは間違いなくロックミュージックのフォーマットに則り、現代のニューウェーブとして完璧なものに見える。しかしマットバーニンガーの特徴的なバリトンと内省的な姿勢は前述した全ての要素を打ち消すほどの個性でロックフォーマットを打ち破り、この曲を唯一無二のものにした。それは帰属先を失った男が描かれる歌詞にも現れ、これほどエモーショナルな曲展開にも関わらずどこか不安定な印象を生み出すことに成功している。

 

 

 

15 Real Love Baby / Father John Misty

 無垢で純真なザ・ラブソングであり、それ以上もそれ以下もない。シンプルなギターと切なる愛の言葉、それを過不足なく伝える美しいメロディがあり、すべては満ち足りている。

 

 

 

16 Walls / Beck

 どこか民族音楽的な響きをもつシンセサイザーと、デンジャーマウスのプロデュースによる先鋭的なリズムトラック。常にあらゆる要素を足し、切り貼りして音楽を作ってきたベックが初めて引き算の音楽に挑戦したアルバムの作品であり、プロデューサーの実力も合わさり短い曲ながらも高いレベルの完成度を誇る。

 

 

 

17 The Masterplan / Oasis

 うす曇りのヴァ―スの先にあるコーラスはワルツのように流麗であり、韻を踏んだ歌詞はそのリズムを更に際立たせている。歌詞においても彼らの敬愛するThe BeatlesのLet it beをリスペクトすると同時に、The Masterplanというテーマを置くことにより神の意思に対してポールマッカートニーとは別のアプローチを取っている。そしてテーマの壮大さに見劣りしないよう、雄大なホーンセクションとストリングスが鳴り響くアレンジでノエルなりのウォールオブサウンドを完成させた。

 

 

 

18 Yellow Ledbetter / Pearl Jam

 グランジの雄であるPearl Jamのパブリックイメージからは大きくかけ離れた落ち着いた曲調の作品。アンコールの定番であるなどライブでの人気が極めて高く、シンプルなアレンジによりエディヴェダーの作曲能力の高さを改めて感じられる。

 

 

 

19 Turn / Travis

 Travisよりも美しいギターを奏でるバンドは広大なロックの地平を眺めてもそう多くはないが、この曲はその白眉と言えるだろう。切なくメランコリックなメロディとヴァースで歌われる、あらゆるものを知り、感じ、若くありたいと歌うロックンロールスピリッツ。そしてライブでの合唱を誘うコーラス。彼らがかつて発言した通り、バンドが忘れられたとしても永遠に残る曲と言えるだろう。

 

 

 

20 Caroline, No / The Beach Boys

 美しいものや愛するものは呆気なく失われてしまう。ブライアンウィルソンはその避けがたい運命を空き缶のパーカッションに乗せて歌い、列車の通過音と犬の鳴き声を録音することにより堪えがたい哀愁を演出している。美しく、悲しく、そして失われたものが二度と戻らないことを残酷に突き付ける名曲

 

 

 

21 Where Is My Mind? / Pixies

 Pixiesの楽曲には常にどこか居心地を悪くさせるような奇妙さが備わっている。それは攻撃的な音楽性やボーカルのブラックフランシスによるシャウトによる効果ではなく、もっと根源的なところから発揮されるものだが、その奇妙さを最も強く発しているのは間違いなくこの曲だろう。自己喪失と幻想的な情景描写。コーラスのたびにドラム以外の楽器が沈黙し、繰り返し投げかけられる問いかけは静かな狂気を感じさせる。

 

 

 

22 Someday / The Strokes

 誰かのフェティシズムやひとつのバンドのコンセプトがその後の10年間音楽の方向性を変化させたとすれば、それはジュリアンカサブランカスとThe Strokes以外にありえないだろう。紙やすりのように信じがたいほどに薄っぺらくざらついた、全く音圧の感じられない録音。時代錯誤としか思えないロックンロールサウンドだがジュリアンの投げやりでクールなボーカルと、メンバーそれぞれの多彩な音楽的語彙はそのコンセプトに唯一無二サウンドをもたらした。

 

 

 

23 All These Things That I've Done / The Killers

 大体においてブランドンフラワーズの歌詞は何を言っているのか理不能だが、とにかくリスナーを鼓舞し盛り上げることに関しては現代においても屈指の才能を持っていることは間違いないだろう。ライブにおいて演奏されるたびに彼が満足するまでやる、と言われる「I got soul, but I'm not a soldier」のチャントは確かに胸を熱くさせるものがあり、デビューと同時に彼らを巨大フェスのメインステージに押し上げたことも頷ける。

 

 

 

24 Fools Gold / The Stone Roses

 音楽を聴き始めた当初、極めて曖昧な言葉であったグルーヴという概念を理解する切っ掛けとなった曲である。タイトで手数の多いドラムと絡みつくようなベースライン。そして小気味よく跳ねるギターは完璧なコンビネーションで有機に作用し、繰り返しの美学によって快感を生み出している。

 

 

 

 

 

25 Cruel To Be Kind / Nick Lowe

 アップテンポでどこか愛らしさすら感じさせるこのラブソングは、日本においては「恋するふたり」という素晴らしい邦題を付けられてリリースされた。歌詞で描かれる女性は本当に可愛らしく、「もっと優しくしてよ」と情けなく頼み込む男に対する返答はこの曲のコーラスを何倍も素晴らしいものにしている。

 

「わざと冷たくふるまってるの/それが正しいやり方/意地悪にふるまうのが/恋してるってこと/冷たくすることが私の愛し方なんだから」

「ベイビー/冷たくしなきゃ優しくなれないのかい?」

 

 

 

26 I Am Trying to Break Your Heart / Wilco

 2000年代前半のロックミュージックにおける革新的な出来事として、The Strokesを代表するガレージロックリバイバル、そしてWilcoのYankee Hotel Foxtrotの完成が挙げられるだろう。この曲はその冒頭に収録され、伝統的なカントリーにパンクの要素が加わった、いわゆるオルタナティブカントリーに属する作品でありながら、ジムオルークの功績によりそれを逸脱する音響効果を備えた傑作となった。抑制されたパートから突如目が覚めるほどくっきりとしたピアノの音色が響き、それが鳴り終わる頃には以前とは比べ物にならない砂嵐のようなノイズが響く。目まぐるしく展開する全てが混然一体となり相互に作用しあい高め合うバランス感覚は、バンドの気力の横溢とジムオルークとのマジックを雄弁にあらわしている。

 

 

 

27 My Girls / Animal Collective

 2009年にリリースされたこの楽曲は、ボーカルのPanda Bearによる極めて原始的な遠吠えのようなボーカルと先進的なエレクトロニカ/サイケポップ的なトラックの組み合わせという着想により、全く新しい音楽の地平を切り開いた。それは実験的でありながら明るく祝祭的な雰囲気を備え、伴侶を迎え入れるために奮起する男という素朴なテーマについて歌われている。

 

 

 

28 Breed / Nirvana

 この曲に限った話ではないが、Nevermindに収録されたNirvanaの楽曲は、ギターを買ったその日に弾くことが出来るような単純さでありながら心を高揚させ、激しい心を捉える力を持つ。Nevermindの4曲目に収録されたこの曲は作中屈指の疾走感とスリリングなギターを備え、あらゆる人間を否応なくモッシュピットに叩き込むパワーで183秒間を駆け抜けていく。

 

 

 

29 Take Me Out / Franz Ferdinand

 豪快なギターストロークで幕を開けるこの曲は、一瞬虚を突かれるようなダイナミックな転調から縦横無尽に跳ねまわるリズムで問答無用に高揚させていく。芸術性とポップ、そしてロックミュージックの荒々しさが同居している。決してFranz Ferdinandを見縊るわけではなく、ただただこの曲の稀代の傑作性を称賛する意味で、彼らがこれを超える音楽を生み出すことはありえないだろう。

 

 

 

30 Maps / Yeah Yeah Yeahs

 金切音のようなギターと重厚なドラム。カレンOという常人離れした稀代の存在感を持つボーカルによる、悲しいほど恋々とした歌詞が胸を打つ。

「待って/誰も私のようにあなたを愛せない」

 

 

 

31 Love Will Tear Us Apart / Joy Division

 リリース直後に自殺したイアンカーティスの絶望とどうしようもない倦怠感。度々繰り返される「また愛が僕たちを引き裂いてゆく」というコーラスの悲痛さが際立っている。

 

 

 

32 Rocket / Smashing Pumpkins

 冒頭から繰り返し奏でられる印象的なギターリフは通奏によりウォールオブサウンドの役目を果たしつつ、時に不穏な揺らぎを加えることにより曲全体に不安定さを加えることに成功している。それこそが美しくポップなギターロックを演奏しながらどこか奇妙な気配を持つビリーコーガンの真骨頂である。

 

 

 

33 When the Sun Goes Down / Arctic Monkeys

 クリーントーンエレキギターと共に、街にたたずむ娼婦の描写と彼女を利用する女衒への痛烈な罵倒の弾き語りから始まるこの曲は、直後にArctic Monkeysらしい爆速のギターリフとベースのシンクロにより劇的な感情の爆発を起こす。その落差と目が回るような急展開は凄まじく、リスナーはコーラスで繰り返される「陽が落ちると変わっちまうと言われてる/この辺りは」というラインと共に、邪悪な女衒とただ堕ちていく娼婦の姿を突き付けられる。救いなく突き放すようなアレックスのボーカルもまた、この曲のメッセージにこれ以上ないほど効果的に機能しているだろう。

 

 

 

34 Skinny Love / Bon Iver

 ジャスティンヴァーノンの頼りない繊細なファルセットとシンプルなコードストロークに乗せ、この曲は今にも死を迎えそうな「やせ細った愛」について歌われる。エゴイスティックな自己憐憫すれすれの歌詞だが、そのギリギリの場所で伝統的なフォーク/カントリーのフォーマットによって持ちこたえている。

 

 

 

35 Obstacle 1 / Interpol

 ニューウェイブシューゲイザー。80年代のロックヒーローたちへのリスペクトを惜しげもなく示したこのバンドは、単なる焼き直しではなく現代の絶望を描き最新のインディロックとしてシーンに存在感を示した。憂鬱なうめき声とへヴィで硬質なギターサウンドは、後進のインディロックたちに大きな影響を与え、現在においてもその素晴らしさは些かも損なわれることはない。

 

 

 

36 The Weight / The Band

 旧約聖書とルイスブニュエルに影響を受けて書かれたこの曲は、リヴォンヘルムの甘く魅力的な歌声と卓抜した歌詞により多義的な意味を持つ。クラシック、カントリー、ゴスペル、そしてロック。あらゆる精神に繋がりを持ち、その全ての基準における偉大なる楽曲である。

 

 

 

37 Cold Hard Bitch / Jet

 Are You Gonna Be My Girlよりもなおロックンロールのクリシェに忠実に作られたJetの快作。エイトビートと力強いコードストローク破れかぶれなシャウトさえあればロックミュージックに何の不足もないことを我々に伝えてくれる。

 

 

 

38 Lost In The World / Kanye West

 Bon Iverのジャスティンヴァ―ノンをフィーチャーしたカニエの最も挑戦的な作品の一つ。民族的なリズムトラックとジャスティンヴァ―ノンによる歌唱は呪術的な雰囲気を備え、この世界で、そしてアメリカで行き場もなく彷徨い苦しむ様子を描写したリリックに対し非常に効果的に働いている。

 

 

 

39 March of the Pigs / Nine Inch Nails

 暴力的、としか言いようがない嵐のようなドラムのラッシュと、それに鞭を入れるようなトレントレズナーの絶叫ボーカル。その狂気的な進行は美しいピアノの旋律によって突如かき消されるが、一瞬後にはそれすら幻だったように再び狂気の奔流に飲み込まれていく。

 

 

 

40 Lost / Frank Ocean

 どこか可愛らしくポップなトラックに乗せ、愛する男のためにドラッグを運ぶ女について歌っている。その愛ゆえの蒙昧な行動を迷子に喩え、どうにもならない感情に翻弄される様子は物悲しく曲を飾り立てる

 

 

 

41 Downtown Train / Tom Waits

 トムウェイツのキャリアの中で最もポップな曲であり、キースリチャーズがレコーディングに参加したことによりロック/ブルース的なテイストが高まっている。にぎやかな夜の街を行き交う空虚な人々やそこに隠された罠。都市の孤独に包まれ、列車に乗って恋人に会うことを夢想する情景を、ウェイツは誰よりも特徴的なしゃがれ声でがなり立てるように歌いあげている。

 

 

 

42 One Headlight / The Wallflowers

 ギターリフやベースライン、ピアノの旋律やドラムソロなど、楽曲を印象的なものにするセクションというものは確かに存在するが、曲の始まりを告げるスネアドラムがその域に達した曲というのはこれ以外に存在しないだろう。ボブディランの息子であるジェイコブが世界にその才能を示したアメリカーナ。

 

 

 

43 Dry Your Eyes / The Streets

 エレガントなトラックとセンチメンタルな別れのリリック。あまりにもメロディアスなコーラスはメッセージを浮かび上がらせ、くどくなってしまう寸前でマイクの誠実さへと結実している。

 

「涙を拭けよ/受け入れられないかもしれないけど/彼女の気持ちは変えられない/海にはもっと沢山の魚がいるんだ」

 

 

 

44 Happy / The Rolling Stones

 キースリチャーズ作だけあり、荒々しいガレージロックのような質感ながら、どこか可愛らしいポップさが同居する不思議な曲である。The Rolling Stonesの無法/ヤク中/喫煙担当である彼の歌詞は完璧にそのイメージを果たした。

 

 

 

45 Mykonos / Fleet Foxes

 伝統的なスタイルに敬意を払いつつも、三部構成というユニークな試みと彼らの持つ音楽的語彙により最新のフォークが奏でられている。彼らの巧みなボーカリゼーションも遺憾なく発揮されており、演奏が二部、三部と発展するごとに彼らの声はその表情を変えていく。

 

 

 

46 VCR / The xx

 極限まで絞られた音数と、メランコリックな雰囲気。ツインボーカルであるクロフトとシムが交互にボーカルを取り合い、時にハーモニーを奏でる。他愛ない会話を交わす恋人同士の親密さと愛を描写しながらも、「私たちってスーパースターみたいね」という夢物語のような会話はどこか空虚に響いている。

 

 

 

47 Satellite / Guster

 マサチューセッツ出身のインディロックバンドによる作品。アコースティックギターと二人のボーカルのハーモニーという彼らのスタイルに極めて忠実な楽曲でありながら、冒頭に鳴っている奇妙なシンセサイザーにより一風変わった印象を抱かせる。

 

 

 

48 One Big Holiday / My Morning Jacket

 完璧なアメリカンロック。遠吠えのようなボーカルと、抑制されたイントロから苛烈にうねるギターとドラム。音源よりもなおライブにおいてその真価を発揮し、ジャムセッションによりさらにその価値を高めていく。

 

 

 

49 Let's Go Out Tonight / The Blue Nile

 完璧な夜のサウンドトラックがあるとすればこの曲に他ならない。静謐かつ、闇の向こうに何かがあることを期待させる美しい音像。それは夜をただ孤独なものとして描くのではなく、どこかに確かにきらびやかな場所があり、そこで生きている誰かが存在することを示している。

 

 

 

50 Brennisteinn / Sigur Ros

 激しく、重く、地鳴りのような曲である。かつてのSigur Rosからは考えられないほど攻撃的な音は再生した瞬間からリスナーを驚愕させ、やがてそれすらも序章に過ぎなかったことを理解させるように、嵐のようなパーカッションとノイジーなストリングスによって更に凶暴性を増していく。